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建学の精神
建学の精神

 

常葉学園は、学問の研究と人間の育成に限りない情熱を傾けられた日本史学の泰斗木宮泰彦先生によって、昭和21年に創設された。「戦後の混沌とした日本を再び立ち上がらしめ、光輝ある平和な文化国家を建設するためには、先ず教育の力にまたなければならない。」と のゆるぎない信念のもとに、敢えて困難をも顧みず常葉学園の創設にあたられたのである。この教育の力に対する創立者の信頼と確信こそは、本学園の建学の精神の根本である。

 創立者木宮泰彦先生は「万葉集」に見える聖武天皇の御製

橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜ふれどいや常葉の樹

 に因んで学園を「常葉」と名づけ、その理想の姿を橘の瑞木に託された。霜雪に耐えてつねに青々とした葉を繁らせ、純白で香り高い花を咲かせ、豊かな黄金の実を結ぶ橘こそは、常葉学園の教育理念の象徴である。即ち、本学園の理想とする人間像は、美しい心情をもって、 国家・社会・隣人を愛し、堅固な意志と健康な身体をもっていかなる苦難にもうち克ち、より高きを目指して学び続ける人間である。

 百丈禅師のことば「一日作さざれば一日食はず」を自戒として、日々研鑽を積まれた学園創立者木宮泰彦先生の生涯は、まさにこの建学の精神の具現であった。先生は順境に奢らず、逆境にめげず、常により良き自己の実現のために、生涯にわたって真摯な努力を続けられた。この創立者の精神こそ常葉学園にかかわるすべてのものの心である。

常葉の由来

 本学園が創立されたとき、創立者は静岡に因んで名産柑橘の一種橘花をもって校章と定めました。橘は古くから桜と並び称せされ、京都にある紫宸殿前庭にも、左近の桜と並んで右近の橘があります。清少納言も「枕草子」の中で、雨の朝の橘花は露にぬれた桜花にも劣らぬ風情であるとほめたたえています。
 今から1300年ほど前、奈良朝の元明天皇の皇子であり、持統天皇の皇孫にあたる軽皇子をご養育申し上げた県犬養三千代という婦人がいました。和銅元年(708)元明天皇が即位せられ、大嘗祭が行われた後の宴会の席上、天皇は三千代をさし招かれて、幼少から皇子を熱心に養育してきた彼女の誠忠をお賞めになりました。そのとき、盃 の中に橘の実を浮かべて賜わり「橘は果実の長上、人の好む所なり、霜雪を凌ぎて繁茂し、寒暑を経て彫まず、珠玉と共に光を競ひ、金銀に交じって美し。以て汝に橘の宿禰の姓を賜ふ。」という詔がありました。それから三千代は県犬養という姓を改めて橘三千代と称して、源平藤橘と並び称された名家の祖となったのです。
 三千代は藤原鎌足の子不比等に嫁して、のちに聖武天皇の后となられた光明皇后をお生みになりました。皇后は姿も心もたいへん美しいお方で、膚からの光が、絹衣を透して輝くばかりであったところからその名がつけられたと伝えられています。非常に慈悲の心が深く、施薬院や悲田院を自ら営まれ、庶民にも深く慕われました。藤原氏がおおいに栄えたのも、その一半は三千代の功績によるものと言われています。
  聖武天皇が三千代の子である橘諸兄に賜わった御製に、
         橘は 実さへ 花さへ その葉さへ
         枝に霜ふれど いや常葉の樹
 とあります。
 本学園は、橘が青々として、いつも変らない常葉であるごとく、学園もまた常に生々発展することを願って、法人の名称を「常葉学園」と名づけたのであります。