第1回
附属接骨院担当 林
スポーツ選手がケガをした後、あるいは運動後にアイシング(冷却)をしている場面をテレビ等で見かける事があると思います。では、なぜアイシングが良いのでしょう?
スポーツ以外の日常生活の場面でもアイシングは広く利用することができます。捻挫や肉離れ、打撲等のケガは職場や学校等でも起こりえます。
スポーツ現場の応急処置がそのまま利用できるアイシングは特別な医療器具を必要とせず、氷さえ用意すれば誰でも簡単に行う事ができます。
ケガをした箇所はどうなるの?
損傷された靭帯や筋肉の組織は壊れ細胞膜や血管が傷み細胞液や血液が流れ出します。俗に、内出血といわれるものです。外に染み出した細胞液や血液による圧力は周囲の毛細血管を押し曲げ、これによって正常な血液循環が阻害されてしまい浮腫形成にもつながります。その結果、健康な細胞の酸素や栄養素不足に拍車がかかり老廃物の除去にも支障をきたします。これを、放置しておくと損傷の範囲が次第に広がってしまいます。
アイシングの効果は?
ケガをして損傷された細胞は酸素・栄養素不足に陥りますが、その周囲の正常な細胞までもが影響を受けて壊死の危険にさらされます。アイシングはこの細胞の壊死を防ぐために大きな威力を発揮します。
アイシングには、ケガをした患部を冷やすことでその部位の細胞の代謝レベルを下げ細胞が必要とする酸素・栄養分の絶対量を減らす効果があります。結果、損傷した箇所の腫れや出血を最小限に食い止める効果があります。
しかし、すでに破壊されてしまった細胞に対してはアイシングの効果はありません。冷やしたからといって早く修復されるわけではないのです。アイシングはあくまでも損傷を最小限にくい止め、周囲の健康な細胞に被害が及ぶのを防ぐ手段と考えて下さい。
なぜ氷を使うの?
アイシングは筋肉や靭帯等を冷やすのが目的ですから、体から熱を奪うエネルギーを持ったものでなければなりません。氷が他のアイシングに比べて優れている点は、冷却能力にあります。氷の中でも0℃の氷こそが最も冷却能力に優れています。その理由は融解熱の大きさにあります。氷の融解熱は約80cal、ドライアイスでは約43cal、四塩化炭素では約40calです。氷は冷却能力にも優れ、安価で誰にでも簡単に用意でき、しかも凍傷を起こしにくいなど安全性の面でも優れています。
融点 |
融解熱 |
|
氷 |
0℃ |
79.7cal/g |
ドライアイス |
―56.6 |
43.2 |
四塩化炭素 |
―22 |
39 |
* 融解熱・・・固体を完全に液体にするのに要する熱量
引用・参考:スポーツアイシング 大修館書店
しかし、温度がマイナスになった氷やコールドパックを使ってアイシングをすると短時間であっても凍傷を起こす恐れがあります。できるだけ0℃の氷を使うように心がけましょう。家庭用冷蔵庫のフリーザーで作る氷はマイナス温度になってしまうので、使用前に水にさらして表面を少し溶かして使うとか、水を混ぜて氷水の状態で使うなどの工夫が必要です。
スポーツ現場や接骨院で用いられているアイシング用具
氷嚢が無い場合のアイスパックの作り方
(ビニール袋を使用します)
@ ビニール袋に適量の氷を入れてください。 | A氷を平らに並べます。 家庭用冷蔵庫の氷の場合、少し水を入れてください。 |
Bビニールの口から中の空気を抜きます。 | C空気を抜きながらアイスパックを回転させてビニールの口をねじります。 |
D空気が入らないように口をしばって出来上がり!! |
アイシングだけでいいの?
ケガをしたらただ冷やすのではなく、RICE処置をひとまとめに行ったほうが効果的です。
R(Rest):安静
→患部の安静固定。
I(Ice):冷却
→血管を収縮させて炎症や出血を抑え、痛みを軽減する。細胞の代謝レべルを下げる。
C(Compression):圧迫
→周囲の組織や血管を圧迫し患部に細胞液や血液が滲出 して内出血や腫れがおこるのを防ぐ。
E(Elevation):挙上
→患部を心臓より高く挙げることで内出血を抑える。
アイシングの禁忌
- 皮膚の感覚が麻痺、消失している場合
- 寒冷過敏症
- 末梢循環障害
- 心臓及び胸部 等の人にはご注意ください。
接骨院では、骨折、脱臼だけではなく普段の生活でも起こりうる軟部組織の損傷(捻挫、肉離れ)の施術もおこなっております。お気軽にご来院くださればケガの予防等のアドバイスもさせていただきます。